立身いたしたく候【時代小説書評】

表紙とタイトルから、無役の武士が就職活動を頑張る話で、武家社会の世知辛い舞台裏を描くのだなと思っていました
決して間違っていないのですが、ちょっと予想を裏切る形で面白かったので紹介します

まず主人公は商家の五男で、武士ではなかったのですが、
跡継ぎの男子がいない御家人の家に養子に入って武士になった「野依駿平」という青年で17歳(若い!)
もっと中年サラリーマン武士の悲しき就職活動みたいなのを想像していたのでいきなりびっくり
その家の一人娘で、主人公の将来の妻となる「もよ」がなんと12歳(子供!)
そして、主人公の幼馴染で下級武士の次男の「矢萩智次郎」
この明るくて豪胆なキャラがちょっとのんびりした主人公を巻き込む形で話が進むという
全体的に若くて明るい江戸の日常小説という感じでした

もちろん話の軸は主人公がなんとか養父(病弱で今まで幕府の役職に就いたことがない)の期待に答えるよう、就職活動をするというものですが、
主人公が若いというのもあって、何かのんびりしていたり
もともと商家の出なので武家社会の面倒くささに辟易してるのが面白い

この内容だと、表紙は最近の時代小説に増えてきたライトノベルっぽいものにしてもいけるんじゃないかと
登場人物のキャラが立っていて、マンガ的な感じがするし
もよなどは文字だけでよくここまでかわいさを表現できるなぁと思います
ボーイズラブを連想させる場面があったりと、そういうの好きな女の子にもオススメ(?)です

ただし、ちゃんとした時代小説ですので
徳川幕府の色々な役職の人間が出てきて、その内情の一部を知ることもできます
主人公は無役なので、「小普請組」という部署に振り分けられているのですが、
仕事はありません
(よろしければ当ブログ【江戸時代の基礎知識】「旗本と御家人」をご覧ください)
小説の中では「逢対」といって、上役の「小普請組支配」や「小普請組頭」の屋敷に行って何度も顔を売り込むということをやります
逢対の日には主人公と同じ無役の武士達が順番待ちで屋敷の門外から並んでいます
こういった江戸時代の武士の非合理でトホホな部分も知ることができます

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