【江戸時代の基礎知識】武士の給料 ~ 石高って何?~

時代劇や時代小説で
「加賀百万石」だとか、「あのお侍さんは三十俵二人扶持だ」などという文言がよく出てきますが
つまりどういうことを言っているのかくわしく説明できる人は少ないんじゃないかと思います

米の取れ高や給料のことを言ってるのはわかるんだけど……

自分自身も前々から奥歯に物が挟まったような、ピンと来なさがありますが、
江戸時代を理解するには非常に基本的で重要なことなのでまとめてみたいと思います


コメが経済を回す

お米というのは全国津々浦々生産され、みんなとりあえず欲しがるということで、
昔から間違いのない取引材料になってきました
そのうえ長期間保存がきくので、これを貯め込んでいる人間は安定的に欲しいものがたくさん手に入れられるのです
つまり米は全国で通用するお金のようなものでした
こうして日本ではだんだん米の生産がそのまま経済と結びついていきました

江戸時代、領地を持っている人達(主に武士)は年貢を農民に米で納めさせ、それを領内の家来に給料として配る…
米を受け取った人は、それを換金して生活に必要なものを買う
ということで経済を回していた
つまり米が貨幣の裏付けとして経済の中心になっていたのです
ただし、米以外の産物の生産量も上がり、人々の生活がどんどん豊かになると
相対的に米の値段が下がり、時代が下るにつれて武士の生活は苦しくなっていきます…


昔の容積の単位を知ろう

石(こく)というのは、日本で昔から使われていた尺貫法(しゃっかんほう)という単位の系統でいう、容積の単位

1番簡単にざっくり言うと一石というのは人ひとりが「一年間でこのぐらいお米食べるよ」という量
つまり一石あれば、人ひとり1年間養えるので、コメ石あげますと言われたらとてつもない量です

リットルにすると、180.391リットル(以下、わかりやすいように小数点以下は切り捨て)
大きすぎてピンとこないので、もう少し小さな単位も含めて見てみる

今でも、は灯油などの「一斗缶」、は酒などの「一升瓶」などで使うのでイメージしやすいんじゃないかと思います
一番使うのはかな?
ご飯を何合炊くだとか、酒を何合だとか…
「日本酒を何ミリリットル飲んだ」とか言ってる人見たことないです
つまり日本人が生活していくうえでキリのいい単位ということ

もこういった単位の延長線上だということがわかります
このほかにも容積の単位はあるが、上の5つを覚えていれば今後色々役立つと思います
「こくとしょうごうしゃく」と覚えましょう
そのまんまじゃん…

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武士の給料

江戸時代には自分の領地を持っている人がいます
(といってもそれらは全て幕府から貸し与えられているという形をとります)

まずは大名
この人たちは当然領地を持っています
1万石からおよそ100万石まで幅広いですが、100万石といったら100万石の米が収穫できるぐらいの領地を持っているということ

そして、旗本や御家人や諸藩の藩士などにも、領地(知行地)を与えられ、そこからの年貢を収入としている者がおり
これを知行取りといいます

これらの人々の収入は石高で表され、それだけでステータスになります
領地を持ってる=イバれる!!

 

知行地を持たない武士には米や現金で支給されました
大半の支給形態は米で、「100俵」とかという単位で表されました
1俵は俵(たわら)ひとつ分ですが、この量は幕府や各藩で違っていました
幕府の場合は1俵=3斗5升
ちなみにほとんどの武士は100俵以下だったようです

そして扶持米といって、下級武士に毎月支給される扶養手当みたいなものがあります
「〇人扶持」と表わされ、1人扶持は1人の人間を養えるぐらいの米=1日5合=30日で1斗5升=1年で1石8斗もらったということになります
これは米俵で5俵分に相当するので、
1人扶持=5俵と一般的に言われています

「鬼平犯科帳」の漫画を読んだとき、長谷川平蔵の下で働いている同心の山田という人が
30俵2人扶持の薄給だみたいなことを書いてあったので、
この一般サラリーマンみたいな人を例にとると、
年間30俵(=10石5斗)と、月イチで2人扶持(=年3石6斗)もらってるということでしょう
だいたい1石が1両ぐらいとすると、年およそ14両(銭4000文)で1年暮らしたということになります

 

最も下っ端な武士ともなると、3両1人扶持で、現金と扶持米が支給されるだけでした
他家への住み込み(武家奉公人)などで生活費がかからないような人たちだったようです
「侍」「若党」などと呼ばれるような、召使いなんだけど一応武士、みたいな人達
よく時代劇で貧乏侍を「サンピン」とバカにしたりしますが
それはこの3(サン)両1(ピン)人扶持の最下級侍のことでした

 

ちなみに「現金支給があるんだったら、最初から全部そうしてよ」
みたいな現代的な考えは通じません
武士には現代人にはわからないメンツがあって、
とにかく給金なんかより米でもらうのがエラいんだという意識があったようです


家柄で給料が決まる

江戸時代の武士は今でいう軍隊なので、幕府や藩に属しているだけで給料は出ました
しかし家禄といって、初めからその家の格によって貰える額は基本的に世襲制で決まっていました

家禄の低いものはそれ相応の役職にしか就くことができません
これは役職を果たすための経費が自腹だったので、
禄高の低い者が経費に困るからというのもあったようです
ただ、このシステムだと能力のある人間を適材適所に配置できないという問題がありました…

そこで八代将軍吉宗の時代に幕府では「足高の制(たしだかのせい)」という制度ができます
これは役職ごとに一定の「役高」を決め、役職に就いた者の家禄との差を「足高」として補填してやるというものです
例えば、1000石の家禄がないとこの役職には就けないよ…という役職があったとします
この役職に300石の家禄の人を抜擢したいとすると、その分の差700石を幕府が支給してあげるというものでした


まとめ

石高や武士の給料について基本的なことだけ書いてきました
このテーマについて深く見ていくと、とんでもなく複雑怪奇なもので、
とてもじゃないが私なんぞの手に負える話ではありません

我々素人が江戸時代の細かい経済事情を調べるときには
あまり複雑な専門用語に惑わされないようにしましょう

ここでは、武士の収入形態として
・知行(領地)を持っていて、そこから年貢を得て収入にする者
・米を支給されてそれを現金に換える者
・現金を支給される者
本当にざっくりいえばこの3つです
これの混合型があったり、古文書の書き方の違いがある(しかもそれすらにメンツがあったりする)のでややこしいのです

また機会があればもう少し突っ込んだ話を書くかもしれません


武士の給料形態には用語がたくさんあり、かえってややこしいので今回は省きました…受験勉強じゃあるまいし、大事なのは中身


おまけ ~おすすめ本の紹介~

前述している容積の単位の他に、
日本で昔から使われている単位は様々なものがありますが
多くの単位を明治以降外国に合わせたため、
使われなくなってしまったものが多いのです

しかし日本の単位というものは
日本の生活で使うのにキリがいい、現実的な単位だということを知ると
たちまち興味が沸いてきます

そんな日本に住んでいるはずなのに今は聞きなれない日本の単位について、
容積、面積、重さ、時間……などなど
わかりやすく紹介した本が「ニッポンのサイズ」(石川英輔著)です
これを読めば、身の回りのサイズについて、
日本が昔に置いてきてしまったものについて、改めて考えるヒントになるでしょう


参考文献
「歴史人 2014年7月号」(KKベストセラーズ)
「お江戸の役人 面白なんでも事典」仲江克己(PHP文庫)



コメント

  1. […] えじりのすけ宿江戸時代の基礎知識【武士の給料は? 石高って何?】https://ejkobo.work/blog/2018/11/15/kiso001/はじめに自分が時代劇の漫画を描いていることもあって、このブログでは、時代劇 […]

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