「家康、江戸を建てる」をより楽しむためのまとめ①【家康、江戸に来る】

門井慶喜氏のベストセラー小説「家康、江戸を建てる」がこの度、NHKの正月時代劇としてテレビ放送されるにあたって、
その時代背景をよりよく理解するためのまとめを行っていきたいと思います

家康、江戸を建てる (祥伝社文庫)


家康の関東転封

徳川家康といえば、「天下統一して江戸に幕府を開いた人」として歴史にあまり興味がない人でもその程度の認識はありますが、
別に江戸に来たくて来たわけじゃないんだけど…というところから物語は始まります
天正18年(1590年)、織田信長の跡を継いだ豊臣秀吉が
向かう所敵なしの勢いで天下統一に突き進んでいた時代です
家康もその頃は駿河を本拠地として、遠江・三河・甲斐・信濃の五ヶ国を領有する大大名でしたが、
秀吉の勢いには及ばず、臣従する形になっていました
秀吉は家康を含む全国の大名を動員して、関東の大半を支配する北条家を下すと、
その支配地域だった関東を家康に与えます
ただし、もともと支配していた五ヶ国は秀吉に取り上げられたので、いわゆる
「国替え」ということになります
小説では「じゃま者を僻地へ追い払った」と秀吉の心境を表しています
家康の元々の領国もかなり大規模なので、それをそっくり全て入れ替えるというこの当時の秀吉の恐るべき強気と自信が垣間見えます
断ったらそれを理由にツブすぐらいに考えていてもおかしくありません

6月中に事前通達があったとみられ、秀吉が小田原城に入り小田原攻めの論功行賞を行った7月13日正式発表後、家康は駿府に帰ることもなくそのまま20日ごろまでには江戸に入ったといいます
なんだかえらく迅速です
やはりこの速さを見るに、何か大きな確信があったとしか思えませんが、
大家臣団を抱える身、決定したら迷ってる暇はなかったんでしょう
それにしても関東についてどの程度のリスクとリターンがあるか前々から把握していたのでしょうか…
少なくとも東国で戦ってきた家康は、西国を中心に戦った秀吉よりは関東の事情に精通していたと考えられます


関東転封のリスク

それでは、関東に行かされることの何がリスキーなのでしょう
まず心情として自分が苦労して勝ち取って慣れ親しんできた、
勝手知ったる領国を離れるのは誰でも嫌でしょう
家臣団の心も離れてしまうかもしれません

現実的な問題としては、関東には佐竹や里見などの未だ秀吉に臣従していない勢力も残っているので
それらの対処にも苦労しそうです
領国経営も、長く北条が治めていた土地ですから、領民を一から手懐けることから始めなければなりません
うまく統治しなければ、一揆に苦しめられることになり、
もっと最悪なのはそれを口実に秀吉にツブされるかも…
実際、肥後(現在の熊本)を与えられた佐々成政は、領国経営がうまくいかず切腹させられました

だから北条の抜けた大穴を埋めることは並みの大名では手に負えない仕事なのです
そう考えると、秀吉が家康という巨大な勢力に関東の統治を任せたのも現実的な側面はあるのです
とりあえずはうまい具合に家康を利用できるし、秀吉にとって一石二鳥だったのかもしれません

その一方で秀吉は元々の家康の領国には駿府城に中村一氏、掛川城には山内一豊、浜松城に堀尾吉春など自分の息のかかった優秀な部下を置き、油断なく関東を包囲します


江戸という土地

家康まんが

小説では家康は自発的に本拠地として江戸を選んでいますが、「落穂集」などの資料によれば秀吉の勧めがあって江戸にしたという話もあるようです(だとしたらどの程度の強制力があったのかはわかりませんが…)
とにかく家康は本拠地を江戸にかまえます
江戸という地は全くの無名だったわけではなく、家康が生まれるかなり前ですが、
太田道灌という当時のスーパースターのような武将が江戸城を築き、拠点とした地です
江戸には浅草湊、江戸湊、品川湊という主要な三つの湊(みなと)がありました
利根川や荒川が江戸湾(現在の東京湾)に流れ込み、北関東とも水運で繋がり
鎌倉への中継基地としての役割もありました
また、海運によって西との交易もさかんでした
ただ家康が来たときは寂れ、一面葦で覆われた湿地になっていました
こんなありさまになってることを家康は知ってたんでしょうか?
しかし、大きなポテンシャルがあることは太田道灌が証明しているので、なんとかすれば、なんとかなるのです
そして関東の広大な土地もうまくすれば莫大な富をもたらす農地になるのです
それには一体どうすればいいのか、何がこの劣悪な環境を生み出している元凶なのか…
ここに「家康、江戸を建てる」が始まるわけです

次回に続く


参考文献
「家康、江戸を建てる」門井慶喜(祥伝社)
「定本 徳川家康」本多隆成(吉川弘文館)
「新・歴史群像シリーズ⑫徳川家康」(学研)
「地図と写真から見える!江戸・東京」(西東社)




「「家康、江戸を建てる」をより楽しむためのまとめ①【家康、江戸に来る】」への1件の返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。