時代小説書評_堪忍箱

時代小説書評【堪忍箱】絶対開けないでください

『堪忍箱』宮部みゆき

平成八年(1996)


宮部みゆき作品はこれで3作目の書評ですかね
これも短編集
寝る前にちょっと読むのにピッタリ

これまで読んだ2冊「本所深川ふしぎ草子」「初ものがたり」と同じく
江戸の市井を描いたものですが、
この短編集は少し毛色が違っています

この作品の隠されたテーマは
おそらく「秘密」でしょうか
登場人物が何かしら隠し事を内に秘めていて、
ある日それがふと、わかったりする…
江戸の平凡な人間達の心のせつなさや、情愛、希望、あるいは憎悪
それら多彩な感情が宮部みゆき氏の肩ひじ張らない文章で淡々と語られます


派手さはなく、少し結末をぼかすような作品が中心になっています
かといって大衆向けじゃないのかといえば、そうではなく
読みやすいし、やっぱりワクワクします

この短編集のテーマをよく言い表している文章が
「謀りごと」という作品の中にあるので引用します

『つい昨日まで、差配さんはひとりきりだった。生きているうちは。
けれど、死んだらいきなり、四人にも五人にも増えたみたいだ。(中略)
人間はみんな、こんなふうに隠し事をして生きているものなのだろうか。
だから、急に死んでしまうと、そういう秘密が全部明るみに出て、
まるで、生きていたことそのものが大きな謀りごとだったみたいに見えてくるのだろうか。』

人間はいくつもの仮面をかぶって生活しているといいますが、
それが第三者の視点も加わるとさらに増えてゆくという表現は面白いですね
人の心は一筋縄ではいかないなぁ


個人的に好きな話
●「敵(かたき)持ち」
この本の中では比較的明るくてユーモラスな話
長屋のお侍さんのキャラがいい
●「砂村新田」
貧しい家の娘が商家に奉公に出される系の話はツラいんですけど
読後の爽やかさが好き


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