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蔵米取り
以前【江戸時代の基礎知識】武士の給料は? 石高って何?』という記事で武士の給料のシステムについて基本的なことを書いてみました
今回はそれに関連する、「米」についての話題です
とりわけ「武士の給料としての米」について取り上げます
知行地といわれる領地を持っている武士は「知行取り」といって
そこの住民から年貢米を取って、その米を換金します
その他の知行地を持たない武士は「蔵米取り」といって
給料を米でもらう…
ということでした
言葉にすればカンタンなことですが、
この「米」というのがまた、武士にとっては悩ましい存在でした
広大な幕府の米集積場 浅草御蔵
江戸時代の武士の給料はお米なので、当然蔵にありました
隅田川沿いにある浅草御蔵(あさくさおくら)は江戸幕府が所有するもののなかでも
最大の年貢米の集積地でした
現在「蔵前」として東京都台東区にその名が残っています
ここに関東や東北の幕府領からの年貢が水運を利用して集められました
面積3万6648坪、18世紀後半の米蔵の数は51棟、254万石(およそ4億6千万リットル)の膨大な量の米を収蔵していました
幕臣達の給料である蔵米(諸藩などでは「切り米」ともよばれた)はこういったところから支給されます
当然これを蔵から受け取って、自分たちの食べる分を取るなり、換金しますが、
下級武士でさえ30俵程度は貰うので、
それを自分で受け取って運んで換金なんてどれだけの手間になるかわかりません
そこで登場するのが札差という人々です
札差がボロ儲け
札差は支給された米の受け取りと換金を代行する業者のことです
当然、手数料を取ります
そうすると札差の元にはたくさんの米が集まりますから
ちょうど銀行みたいなことになるわけです
そこで考えることは、米を担保にした金貸し
札差は金融業者でもあったということです
しかも、担保として安く買い叩いた米を高く売って
その差額で儲けたりもしました
そのため札差はボロ儲け
貧乏な武士なんかよりよほど贅沢な暮らしをしてました
時代が生んだ特殊な職業といえます
お米について考えてみる
ここで米について根本的なことに立ち返ってみましょう
米は食物です
長期保存がきくとはいえ
当たり前ですが、劣化します
時間が経つと水分が抜けて、炊き上がったときにパサパサするようになります
この辺、現代人の僕らはあんまり気にしないことですけど
現代ではお米は一般的に温度15℃以下、湿度70~80%で低温管理します
これで劣化を遅らせていて、古米といえどそんなにマズい米は出回らないわけです
しかし江戸時代はどうでしょう
俵に入れたまま蔵に入れておくだけですから
その品質の悪さは想像に難くないでしょう
幕末のある下級武士の証言では、「蔵米は鼠の小便のような臭気がある実にひどい米だった」
などという話もあり
大げさに言ってるだけかもしれませんし、いつもそうだったかはわかりませんが
現代の我々は品種改良されて適切な保管がされているうまい米を食っている
ということを忘れないようにしましょう
実は品質のいい米はみんな位の上の方の人々に支給されており
ここでも下っ端御家人が割を食う暗黙のシステムになっていました
しかし、それだけで世知辛いなどと言っててはいけません
マズい米ということは、高く売れないということです
貧しい人ほど貧しくなるのが世の常なのか…
参考文献
「鬼平の給料明細」安藤優一郎(ベスト新書)
「図説 東京の今昔を歩く!江戸の地図帳」正井泰夫監修(青春新書)
「歴史人2011年11月号 江戸の暮らし大全」(KKベストセラーズ)
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[…] えじりのすけ宿【武士の給料・蔵米について】武士はおいしい米が欲しい!https://ejkobo.work/blog/2019/11/30/kuramai/下っ端武士は蔵米取り以前『江戸時代の基礎知識【武士の給料は? 石高って […]